【名探偵ポアロ 5】「青列車の秘密」★★★★☆

アイキャッチ⑤_青列車の秘密
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名探偵ポアロシリーズ5作めにあたる「青列車の秘密」はアガサ・クリスティが1928年に発表した長編推理小説です。

ポアロシリーズの中ではマイナーな部類ですが、なかなか面白いと感じたのでご紹介していきます。


作品情報

発表1928年
英題The Mystery of the Blue Train
ポアロシリーズ第2作
ジャンルフーダニット


あらすじ

アメリカの大富豪ルーファス・ヴァン・オールディンは、溺愛する娘のルース・ケタリングに<火の心臓>と呼ばれる世界最大のルビーを贈る。

しかし数日後、豪華寝台列車ブルートレインの車内で、ルースは何者かに殺害されてしまう。世界最大のルビー<火の心臓>も行方不明に。

偶然、同じ列車に乗り合わせたポアロはルースの父の依頼を受け、捜査に協力することに。


登場人物


「青列車の秘密」の登場人物一覧です。

エルキュール・ポアロ私立探偵
ルーファス・ヴァン・オールディンアメリカの大富豪
ルース・ケタリングルーファスの一人娘
デリク・ケタリングルースの夫
ミレーユダンサー
デリクの愛人
ナイトン少佐ルーファスの秘書
アルマン・ド・ラ・ローシュルースの愛人
キャサリン・グレーいとこに会いに向かう列車内でルース、ポアロと知り合い事件に巻き込まれる
レディ・タンプリンキャサリン・グレーのいとこ
レノックス・タンプリンレディ・タンプリンの娘
チャールズ・エヴァンズレディ・タンプリンの夫
エイダ・メイスンルースのメイド
ディミトリアス・パポポラス骨董商
ジアパポポラスの娘
ミスタ・ゴビー情報屋
ルーファスに雇われる
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書籍情報


2022年現在、「青列車の秘密」の日本語版は青木久恵さんの新訳版(2004年)と、松本恵子さん訳の電子書籍版の二種類があります。


① クリスティー文庫版(ハヤカワ文庫)

翻訳:青木久恵

走行中の豪華列車“ブルー・トレイン”内で起きた陰惨な強盗殺人。警察は被害者の別居中の夫を逮捕した。必死に弁明する夫だが、妻の客室に入るところを目撃されているのだ。だが、偶然同じ列車に乗り合わせたことから、事件の調査を依頼されたポアロが示した犯人は意外な人物だった!新訳でおくる初期の意欲作。(Amazonより)発売日2004/7/15


② 電子書籍版(グーテンベルグ21)
翻訳:松本恵子

ロンドンのビクトリア駅発パリ・マルセーユ経由ニース行きの特急「青列車」。その中で米国の富豪の娘ルスが殺害され、「火焔の心臓」と名づけられたルビーの宝石が奪われる。この宝石はもとロシアの女帝の胸をかざり、苦悩、絶望、嫉妬など、その通ってきた道に、悲劇や暴力の数々を残してきたいわくつきの宝石だった。ふたたびその持ち主を不幸が襲ったのだ。たまたま同じ列車に乗り合わせたポワロは「私は、エルキュル・ポワロでございます」と言いながら取り調べをする警察署長の前に姿をあらわした……。(Amazonより)発売日2013/3/29


なお、「青列車の秘密」はKindleUnlimitedの読み放題対象作品です(2022年3月時点)。



作者


アガサ・クリスティ(1890~1976)

作者のアガサ・クリスティは1920年に『スタイルズ荘の怪事件』で作家デビューを果たし、1926年に発表した『アクロイド殺し』の常識破りのトリックがミステリファンの間でフェアかアンフェアかの大論争を招き一躍有名になりました。

作品の多くは世界的なベストセラーとなり、ギネスブックによって"史上最高のベストセラー作家"に認定されています。

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ココが面白い

『青列車の秘密』は一言で表すと「豪華寝台列車の旅と」です。

ここから先はネタばれの内容を含みますので未読の方はご注意ください

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犯人の正体にがっかり

ポアロシリーズはいつも真犯人を知って驚くのが楽しみなのですが、主要な登場人物とも思っていなかった人が犯人で正直がっかりでした。
犯人はキャサリン・グレーだと思っていたのに…。

トリックもイマイチ
「青列車の秘密」では、変装して被害者に成りすまし、犯行時刻を誤認させるというトリックが用いられました。
言われてみれば「被害者の顔が傷つけられていた」という伏線がしっかり張ってあったけど…

人物描写が濃やか
「青列車の秘密」はトリックこそイマイチなものの、登場人物がいつにもまして魅力的でした。

キャサリン・グレーもありきたりじゃなくて面白い性格でしたが、一番好きだったのは、レディ・タンプリンの娘レノックスです。
ポアロとレノックスの最後の会話は、切ないけれど希望もあって、個人的には『象は忘れない』と同じくらいお気に入りです。

レノックスは男性が興味を持つようなタイプじゃないので、パパ・ポアロが気づいててくれて少しは報われた気持ちがしただろうな。

舞台が最高
寝台列車にロマンを感じる性質なので、ミステリの舞台が豪華寝台列車というだけでワクワクします。
しかも行き先は南フランス!海の描写だけでなんだか開放的な気分になるのが不思議です。

ちなみに、舞台となった「ブルー・トレイン」は残念なことに既に廃線になってしまっているようです。

サヴォイホテル

作中でルーファスが宿泊したサヴォイホテルはロンドンに実在する五つ星ホテルで、クリスティの他の作品「エッジウェア卿の死」、「バグダッドの秘密」にも登場します。機会があれば泊まってみたい!

ドラマ版(2005年)の感想

「青列車の秘密」は舞台が華やかだったので、どんな風に映像化されたのか気になり、原作を読み終わってすぐにU-NEXTでデヴィッド・スーシェ主演のドラマ版を見ました。

名探偵ポアロのテレビドラマシリーズは評価が高いので楽しみにしていたのですが、「青列車の秘密」に関して言えば個人的には求めていたものと違ってガッカリでした。

<作品情報>

製作2005年
エピソードNo.

シーズン10 第1話

キャストキャサリン・グレー(ジョージナ・ライランス)
デレク・ケタリング(ジェイムズ・ダーシー)
レディ・タンプリン(リンジー・ダンカン)
レノックス(アリス・イヴ)
時間

94分

配信情報

U-NEXT(定額見放題)

青列車の秘密を見る

原作とドラマ版の違い


制作の都合上なのか原作の設定と異なる部分がかなり気になりました。
原作とドラマ版の違いは以下のとおりです。

・ナイトン少佐の年齢が高い
レノックスの性格
・キャサリン・グレーがオールディンに恨みを持っている
・事件後、みんなでレディ・タンプリンの別荘で過ごす
・原作では亡くなったことになっていたルースの母親が登場
・愛人がいるのはデレクではなくルーファス
・パポポラス父娘が登場しない
・ブルー・トレイン内のシーンが多い
・ラストシーン


いつも黒スーツのポアロさんも、リゾート仕様の白いスーツで登場。お洒落です。
デヴィッド・スーシェ氏のポアロは申し分なかったのですが、私が原作で好きだったレノックスの性格が全然違う…!
これじゃ中身が無さすぎるし、こんなに美人じゃないはず。

キャサリン・グレーも美人過ぎるし良い子過ぎる…。
ナイトン少佐はキャサリン・グレーに恋するには歳を取り過ぎだし、メイドはちょっと目立ちすぎ…。

原作のラストシーンはポアロと失恋したレノックスの会話で終わりましたが、ドラマ版のラストシーンは、キャサリン・グレーとポアロのやり取りで締めくくられます。
原作ではデレクと結ばれたキャサリン・グレーですが、ドラマ版では、オリエント急行に乗ってウィーンへ行くとポアロに告げて去っていきます。

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まとめ


アガサ・クリスティの『青列車の秘密』を紹介しました。

ドラマ版は大筋こそ一緒ですが、登場人物の性格が異なっていたりとかなり印象の違うものになっていました。
しかし、ブルー・トレイン車内のシーンが多いので豪華寝台列車の雰囲気を堪能できるという意味合いでは見る価値があります。

Amazonが提供するkindleUnlimitedの読み放題対象作品でもあるので、興味のある方はぜひ読んでみてください!