★★★★☆「ルイの9番目の人生」ネタバレと解説

ルイの9番目の人生ネタバレと解説
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英国人作家リズ・ジェンセンのベストセラー小説を映画化した「ルイの9番目の人生」をご紹介します。

本記事は作品のネタバレになるような内容を含む解説・感想を書いているので、未鑑賞の方はお気をつけください。

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基本情報

製作2015年
監督アレクサンドル・アジャ
時間1時間48分
評価Filmarks:3.5/5点
Yahoo映画:3.41/5点

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あらすじと登場人物

◆あらすじ
天使のように愛くるしい少年・ルイ。
ルイは、まるで何かに呪われてでもいるかのように、生死に関わる大事故をこれまでに8回も経験していた。
そして、ついに9回目の大事故に見舞われ、一命は取り留めたものの昏睡状態に陥る。
小児科医のパスカルはルイの「事故の多さ」に疑問を抱き、ルイがセラピーを受けていたという精神科医の元を訊ねる。

一方、事故現場からこつ然と姿を消したルイの父親の捜査が進められる中、ルイの母親の元に警告文が届く。さらに、小児科医パスカルも恐ろしい悪夢にうなされるなど、ルイの身近な人々や関係者に次々と不可解な出来事が降りかかる。



エイダン・ロングワース

引用元:「ルイの9番目の人生」公式サイト

ルイ・ドラッグス(エイダン・ロングワース)
生まれてから毎年死にかけるという数奇な運命のもとに生まれた少年。
学校では孤立して友達はおらず、心理カウンセラーのセラピーを受けていた。


ジェイミー・ドーナン

引用元:「ルイの9番目の人生」公式サイト

アラン・パスカル(ジェイミー・ドーナン)
自身が幼い頃、夢遊病を患っていた経験から小児昏睡専門の医師となった。
ルイの事故遭遇回数の多さに疑問を持つ。


サラ・ガドン

引用元:「ルイの9番目の人生」公式サイト

ナタリー・ドラックス(サラ・ガドン)
ルイの母。何度も命の危険にさらされている息子を守ろうと必死。


アーロン・ポール

引用元:「ルイの9番目の人生」公式サイト

ピーター・ドラックス(アーロン・ポール)
別居中のルイの父。
元ボクサーで酒好き。ルイの転落事故と同時に姿を消し、指名手配されている。


オリヴァー・プラット

引用元:「ルイの9番目の人生」公式サイト

Dr.ペレーズ(オリヴァー・ペレーズ)
ルイが通っていた心理カウンセラーの医師。




解説

映画「ルイの9番目の人生」は、"昏睡状態にあるルイの意識下" と "実際の出来事"を織り交ぜながら進んでいくので、あれはどういう意味だったの?と思う箇所が多い作品でした。

タイトルに込められた意味

「ルイの9番目の人生」というタイトルから、輪廻転生のストーリーを想像する人もいたかと思います。このタイトルは、ルイが9回生まれ変わっているという意味ではありません。

ルイの母親が『猫には9つの命がある。 執念深い魂が体を離れないのよ。 あなたが猫なら、もう8つは使ってる。』とルイに語りかけるシーンがあり、8回死にかけたルイの、9番目の人生はどうなるのか?
という意味が込められています。

ルイは特別な運命を背負っている?

冒頭でルイが大変な難産の末に産まれたことが語られます。これにより、見えざる手がルイの出生を阻んでいる、もしくはルイ自身がこの世に産まれることを拒んでいるような印象を受けます。

また、医師に死亡を告げられた後に息を吹き返すというのも通常では考えられません(パスカル先生は、小児の低体温症は死亡と酷似してるから仕方ないと言っていましたが)。
これらの描写から、ルイは何か特別な運命を持っている子供なんだという思い込みが生じてしまいました。

そして、精神科医のペレーズとのカウンセリングでは両親の前とは異なるひねくれた物言いや、ペットのハムスターを殺すという残虐性を覗かせます。
こういった数々の仕掛けによって、「ルイ側に何らかの原因がある」というミスリードをしてしまった方が多いのではないでしょうか。

ハムスターの名前

ルイはペットのハムスターに「ラスプーチン3世」と名付けています。

ラスプーチンと言えば、毒を盛られても銃で撃たれても死なず、最後は水に沈められたという伝説の持ち主です。ルイは何度も母親に殺されかけても死なない自分とハムスターを重ね合わせていたのかもしれません。

脅迫状の意味

“パスカル先生と関係をもつな。よくないことが起こる”という脅迫状は、一見、大好きな母親を守るためのものに思えますが、真意はラストのパスカル先生がお見舞いに訪れるシーンで明らかになります。

ルイが危惧した「よくないこと」は、ルイのような不幸な子供が産まれることでした。
ルイの警告も空しく、悲劇が繰り返されそうな暗澹たるラストです。

ミュンヒハウゼン症候群とは

症例として周囲の関心や同情を引くために病気を装ったり、自らの体を傷付けたりする。「ほら吹き男爵」の異名を持つドイツ貴族ミュンヒハウゼン男爵にちなんで命名された。この病気には、虚偽の病気に罹患している対象が自身であるミュンヒハウゼン症候群と、近親者(母親の子供に対するケースが多いが、配偶者などのケースもある)を病気に仕立て上げる代理ミュンヒハウゼン症候群の2種類が存在する。

引用元:Wikipedia

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感想

◆複雑な気持ち
悲しさ、やるせなさ、父子愛への感動、ルイの9番目の人生が幸せなものであって欲しいという願い、面白いものを観たという興奮…色々な感情が湧き上がってきて一言で言い表すのが難しいですが、

強いて言うなら、母親の異常さにどうしてもっと早く気づけなかったんだろう…というやるせない気持ちです。

代理ミュンヒハウゼン症候群が原因で起きた虐待について少し調べたのですが、加害者の母親は「子供の看護に熱心な母親」と見られることが多く、虐待と疑われることが少ないそうです。
「ルイの9番目の人生」については、児童虐待をテーマにすべきでないとか、ファンタジーのように描くべきではないなど賛否両論ありますが、映画になったことで多くの人に知ってもらい、関心を持たれたことは悪いことではないのかなと思いました。

◆ルイの病室がSFぽくてかっこいい
重いテーマを扱った映画ですが、美しい映像のおかげでダークファンタジーのような仕上がりになっており、内容の悲惨さを和らげてくれました。
特に印象深いのが、“昏睡の入り江”と呼ばれる、ルイの病室です。
建築家のフランク・ロイド・ライトから着想を得たそうですが、SFぽい雰囲気で好きでした。

「ルイの9番目の人生」を観た人の感想
・やるせなくて考えさせられる
・ファンタジーで見せるのが斬新!色調がホントに綺麗
・あのラストで泣かない人がいるんだろうか

「ルイの9番目の人生」名言

印象に残った台詞を紹介します。

猫には9つ命がある。 執念深い魂が体を離れないよ。 あなたが猫なら、もう8つは使ってる。 毎年1つずつ。 これ以上、使わないで。 (母親・ナタリー)


I love you more than the whole house.
パパのこと 家よりもっと大きく愛してるんだ。(ルイ)

I love you more than the whole house.
More than the whole street.
More than all fish in the sea.
パパもルイを家より大きく愛してる。街より大きくて、海の魚よりいっぱいだ。(父親・ピーター)

映画とは異なる結末の原作もおすすめ

原作は映画とはまた違った結末となっています。
映画の結末が腑に落ちなかった人は原作も読んでみてください。

九歳の誕生日を祝うピクニックでルイは崖から落ち、昏睡状態に陥る。現場にいた父親ピエールも行方不明になった。ルイの主治医パスカルは、傷心の母親ナタリーに心惹かれるまま、不可解な事件に巻き込まれていく。ミステリーの鍵を握るルイは果たして目を覚ますのか―。内容(「BOOK」データベースより)

まとめ

本作は「ラスト9分で明らかになる意外な真実」という謳い文句で宣伝されているようですが、勘のいい方はすぐにオチに気が付いてしまうためどんでん返しを期待して観ると裏切られます
どの辺りでオチに気が付いたかを話し合ってみるのも面白そうです。

とはいえ、ダークファンタジー、ホラー、ミステリーとジャンルミックスな切り口は新鮮で、美しい映像と相まって目が離せず、個人的には周りにおすすめしたいレベルで面白いと感じました。