【名探偵ポアロ 32】ファン必読「象は忘れない」★★★★☆

アイキャッチ_象は忘れない
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1972年に発表された「象は忘れない」は、名探偵ポアロシリーズ32冊目にあたる長編ミステリ小説です。
推理作家のミセス・オリヴァがポアロの力を借りながら12年前に起きた心中事件の真相究明に取り組む、「回想の殺人」形式のストーリーです。

ポアロシリーズの最終作は刊行順でいうと33冊目の「カーテン」なのですが、カーテンが実際に執筆されたのは1943年であるため、『象は忘れない』が実質的にクリスティが最後に執筆したポアロ作品です。

作品情報

発表1972年
英題Elephants Can Remember
ポアロシリーズ32冊目
ジャンル回想の殺人


あらすじ


作家らが集まるランチに参加した推理作家のミセス・オリヴァ。
オリヴァは、そこで声を掛けてきた初対面の女性から、彼女の息子の婚約者の両親の事件について真相を確かめるよう頼まれる。―妻が先に夫を撃ち、それから自殺したのか。それとも、夫が先に妻を撃ち、それから自殺したのか?

なんとか断ったものの、自分でも十二年前のその事件が気になってきたオリヴァは、友人のポアロに助けを求める。
ポアロは、そんなオリヴァに当時のことを覚えている "象のように" 記憶力のよい人々を訪ねて過去の事件を探るようアドバイスするのだった。

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「象は忘れない」は早川書房(クリスティー文庫)から出版されている一種類のみです。
訳者は「ホロー荘の殺人」や「ハロウィーン・パーティ」の翻訳を担当した中村能三さんです。

推理作家ミセス・オリヴァが押しつけられた奇妙な謎。それは十数年前に起きた心中事件は、男が先に女を撃ったのか、あるいは女が男を先に撃ったのか、というものだった。困り果てたオリヴァから相談を受けたポアロは「象のように」記憶力のよい人々を訪れ、過去の真相を探る。著者晩年の傑作。(Amazonより)発売日2003/11/30

登場人物


「象は忘れない」の登場人物一覧です。

アリアドニ・オリヴァ推理小説家
ポアロの友人
ミセス・バートン=コックスデズモンドの母
オリヴァ曰く "ボス的な女"
デズモンドシリヤの恋人
シリヤ・レイヴンズクロフトレイヴンズクロフト将軍とマーガレットの娘
オリヴァの名付け子
アリステア・レイヴンズクロフトシリヤの父
マーガレット・レイヴンズクロフトシリヤの母
オリヴァの学生時代の友人
ジュリア・カーステアズオリヴァの友人
77歳
ミセス・マッチャムオリヴァの幼い頃のナニー
ミセス・バックルオリヴァの友人
レイヴンズクロフト家で働いていた

作者

アガサ・クリスティ(1890~1976)

アガサ・クリスティは、1890年にイギリスの裕福な家庭に生まれました。

1920年に『スタイルズ荘の怪事件』で作家デビューを果たし、1926年に発表した『アクロイド殺し』の常識破りのトリックがミステリファンの間でフェアかアンフェアかの大論争を招き一躍有名になりました。

作品の多くは世界的なベストセラーとなり、ギネスブックによって"史上最高のベストセラー作家"に認定されています。

クリスティの魅力は「独創的なトリック」や「人物描写」で、デビューから100年以上経った今なお新たなファンを獲得し続けています。

殺人事件を扱っていながら血生臭さや暴力的な描写が無く、上品さすら漂うのも特徴で、紅茶を片手に優雅に謎解きを楽しめます。

ココが面白い


過去の関係者の記憶を寄せ集めて、真相に近づいていく構成で「五匹の子豚」と同じ"回想の殺人" 形式です。
ただし、「五匹の子豚」のような緻密な推理を期待すると当てが外れてしまうかもしれません。

本書の魅力は、クリスティ自身がモデルとされるミセス・オリヴァの活躍にあります。
『象は忘れない』では、事件についての情報を集めるのはポアロではなくミセス・オリヴァの役目です。
忙しくあちこちを回って懐かしい知人たちにレイヴンズクロフト夫妻の事件についてさり気なく話を聞き出し、集めた情報をポアロに報告します。

『私はあちこち駆け回って話を聞いてきたのにあなたはずいぶんのんきね』

また、本筋とは関係ないのですが、オリヴァは "象" 達への聞き込みを通して自身の過去に思いを馳せます。オリヴァ=クリスティと考えると非常に感慨深くしみじみとした気持ちになります。オリヴァが自身のナニー(乳母)に会いにいく場面は個人的にとても好きです。

『人間って昔話が好きなんですね。現在起こっていることや、去年起こったことより、昔のことを話すのがずっとずっと好きなんですよ。』

「人が何かを思い出して話してくれる時、つまり起こったことをそのまま話すのではなくて話す本人が起こったと思ったことを話すことが多いんですね」

タイトルの意味


タイトルである「象は忘れない」はイギリスのことわざで、"象は自分をひどいめに合わせた人を一生忘れないし自分を助けてくれた人も一生忘れない“という意味だそうです。
ただし、本作では単に昔のことをよく覚えている記憶力の良い人々のことを単に<象>と呼んでいるようです。


先に「五匹の子豚」を読む!

「五匹の子豚」を読んでいなくても楽しめるのですが、犯人のネタバレになるような記述があるため「五匹の子豚」を先に読むことをオススメします。

「五匹の子豚」は隠れた傑作としてクリスティファンに人気の作品です。



アガサ・クリスティの作品はAmazonが提供する本の読み放題サービス「Kindle Unlimited」でも読むことが出来ます。
30日間の無料期間中に解約すれば0円で利用することが出来るのでまだ利用したことがない人はオススメですよ!

まとめ

名探偵ポアロシリーズ32冊め『象は忘れない』を紹介しました。クリスティ自身がモデルと言われるミセス・オリヴァが大活躍する本作は、過去の事件への言及があったり、クリスティのポアロへの思い(不満)が零れたりと、クリスティ好きなら思わずニヤリとしてしまう作品です。

ラストの台詞は必見です。