「ゴルフ場殺人事件」はミステリの女王アガサ・クリスティが1923年に発表した長編推理小説です。
人気シリーズ『名探偵ポアロ』の第2作にあたります。
大富豪の依頼人に呼ばれ、急いでフランスにやって来たポアロとヘイスティングズ大尉ですが、依頼人は既に殺されていました。
悲劇を防ぐことが出来なかったポアロは、プライドをかけて真相解明に挑みます。
作品情報
発表 | 1923年 |
英題 | The Murder on the Links |
ポアロシリーズ | 第2作 |
ジャンル | フーダニット |
あらすじ
ポアロは、大富豪のルノー氏から『生命の危険にさらされている、助けて欲しい』という切羽詰まった様子の手紙を受け取り、友人のヘイスティングズと共に急いで大富豪が滞在するフランスの別荘に向かう。
しかし、ポアロとヘイスティングズの二人がルノー氏の別荘に到着した時には既に大富豪のルノー氏は亡くなっていた。
近くのゴルフ場の建設予定地で発見されたルノー氏の遺体は、背中を刺され、掘られた穴の中にうつ伏せに倒れていた。
死体を隠すにしては中途半端な状況だが、誰がルノー氏を殺害したのか?
現地警察のジロー刑事とポアロが犯人特定に躍起になる中、別荘の敷地内で身元不明の第二の遺体が見つかる…。
登場人物
「ゴルフ場殺人事件」の登場人物一覧です。
エルキュール・ポアロ | 私立探偵 |
ヘイスティングズ | ポアロの友人 物語の語り手 |
ポール・ルノー | 大富豪 |
エロイーズ・ルノー (ルノー夫人) | ポールの妻 |
ジャック・ルノー | ポールとエロイーズの息子 |
マダム・ドーブル―ユ | ルノー一家の隣家の住人 |
マルト・ドーブルーユ | マダム・ドーブルーユの娘 |
シンデレラ | ヘイスティングズが列車で出会った謎の娘 |
ゲイブリエル・ストーナー | ポールの秘書 |
ジロー刑事 | パリ警視庁の優秀な刑事 年齢は30歳前後 |
リュシアン・ベー (ベー署長) | 警察署長 |
出版状況
2022年現在、「ゴルフ場殺人事件」は田村義進さんの新訳版(2011年発売)と、松本恵子さん訳版のkindle版の二種類があります。
なお、田村隆一さんの旧訳版は既に絶版となっていますが、中古で入手可能です。
① 新訳版(発売中)
田村義進さんによる新訳版は2011年発売です。
表紙カバーは安西水丸さんの期間限定版と通常版があります。
② 電子書籍版(発売中)
2015年に発売された電子書籍版の翻訳は松本恵子さんが担当されています。
なお、「ゴルフ場殺人事件」はKindleUnlimitedの読み放題対象作品です(2022年2月末時点)。
③ 旧訳版(絶版)
田村隆一さんの翻訳版は2022年現在絶版となっていますが、Amazonや楽天市場などで中古で入手することが可能です。
作者
アガサ・クリスティ(1890~1976)
作者のアガサ・クリスティは1920年に『スタイルズ荘の怪事件』で作家デビューを果たし、1926年に発表した『アクロイド殺し』の常識破りのトリックがミステリファンの間でフェアかアンフェアかの大論争を招き一躍有名になりました。
作品の多くは世界的なベストセラーとなり、ギネスブックによって"史上最高のベストセラー作家"に認定されています。
クリスティの魅力は「独創的なトリック」や「人物描写」で、デビューから100年以上経った今なお新たなファンを獲得し続けています。
殺人事件を扱っていながら血生臭さや暴力的な描写が無く、上品さすら漂うのも特徴で、紅茶を片手に優雅に謎解きを楽しむことが出来るのが特徴です。
ココが面白い
『ゴルフ場殺人事件』は一言で表すと「どんでん返しに次ぐどんでん返しを楽しむ作品」です。
ここから先はネタばれの内容を含みますので未読の方はご注意ください。
ルノー氏が計画したのは、身元不明の遺体を利用して自らの死を偽装する、いわゆる「替え玉」トリックでした。
しかしそこに、ルノー氏の計画を盗み聞きした犯人が便乗したり、愛情のもつれや勘違いが重なってかなり複雑な事件のように感じられ、ヘイスティングズ同様に事件の輪郭さえ掴めませんでした。
おてんばなシンデレラ、危険な香り漂うマダム・ドーブルーユ、金髪碧眼の女神マルト、謎の女性ベラ、ルノー夫人と、色々なタイプの女性が出てくるのも見どころと言えるでしょう。
タイトルの意味
「ゴルフ場殺人事件」という割にゴルフ場はほぼ関係ないので、ゴルフに絡めたトリックを期待するとガッカリしてしまうかもしれません。
原題が"The Murder on the Links"で直訳なので、元々のタイトルのつけ方がイマイチなんですかね。
ちなみに、ハンガリー語圏では「不安な目をした娘」というちょっとネタバレしているタイトルだそうです。
まとめ
アガサ・クリスティの『ゴルフ場殺人事件』を紹介しました。
後半の二転三転する怒涛の展開に最後まで油断が出来ず、そういった意味ではポアロシリーズの中でもスリリングな一作です。
ファンの間では、ヘイスティングズ大尉が後に妻となるシンデレラと出会う話として有名です。
ヘイスティングズ大尉が好きな方は読んでおくべき一冊と言えます。
Amazonが提供するkindleUnlimitedの読み放題対象作品でもあるので、興味のある方はぜひ読んでみてください!