「メソポタミヤの殺人」のあらすじ、登場人物、感想及び原作とテレビドラマ版の違いなどをご紹介します。
作品情報
「メソポタミヤの殺人」はアガサ・クリスティが1936年に発表した長編推理小説です。
アガサ・クリスティは中東を舞台とした作品をいくつか発表していますが、その最初の作品としても知られています。
「メソポタミヤの殺人」にはヘイスティングズ大尉は登場せず、物語は「看護師の手記」という形で展開します。
発表 | 1936年 |
英題 | Murder in Mesopotamia |
ポアロシリーズ | 第12作 |
中近東シリーズ | 第1作 |
ジャンル | ホワイダニット 密室殺人 |
あらすじ
看護師のレザランは、最近様子がおかしいという発掘隊リーダーの妻の世話をするため、調査団の宿舎を訪れる。
調査団のメンバー内にはピリピリとした重苦しい雰囲気が漂っており、博士の妻・ルイーズは何かにひどく怯えていた。
看護師のレザランがルイーズから聞かされたのは、死んだはずの前の夫が自分を殺すと脅迫状を送ってくるということだった。
そして、その翌日ルイーズは殺される。
登場人物
「メソポタミヤの殺人」の登場人物一覧です。
エイミー・レザラン | ナース 32歳 | |
ドクター・ライリー | ハッサニーの開業医 | |
シーラ・ライリー | ドクター・ライリーの娘 | |
ルイーズ・レイドナー | レイドナー博士の妻 | |
調査団 | エリック・レイドナー博士 | 考古学者 調査団のリーダー |
リチャード・ケアリー | アメリカ人建築家 40歳くらいでハンサム | |
アン・ジョンソン | 50歳くらいの感じの良い女性 | |
デイヴィッド・エモット | 寡黙で親切なアメリカ人 | |
ビル・コールマン | 陽気でおしゃべりなイギリス人青年 | |
カール・ライター | カメラマン 内気で無口なアメリカ人青年 | |
ラヴィニー神父 | 古代文字の権威 フランス人 | |
ジョーゼフ・マーカド | 背が高く痩せて陰気な男 | |
マリー・マーカド | ジョーゼフの妻 25歳くらい |
ネタバレなしの感想
Amazonの紹介文では "中近東を舞台にした作品の最高傑作" なんて書かれていますが、個人的にはそこまで面白いと感じませんでした。
女性に嫌われるタイプ
被害者のルイーズはかなりの美人でしかも男性を惑わせる魅力の持ち主。
その気もないのに男心を弄び、周りの女性陣をハラハラさせます。
登場人物が多く判別がつきにくい
登場人物が生き生きとしていて書き分けが上手いイメージがありますが、『メソポタミヤの殺人』ではそれがあまり感じられませんでした。
女性は区別がつくのですが、男性陣のキャラがぼんやりではっきりしているのは胡散臭い神父くらいでしょうか。
ルイーズ殺害の動機を探るため、ポアロは事件関係者全員に聞き取りを行い、被害者の人物像を浮き彫りにしていきます。
この手法は『五匹の子豚』や『象は忘れない』と同じなのですが、本作執筆時点ではあまりこなれていないのか、やり取りの過程が冗長に感じられてしまいます。
レザラン目線で発掘現場の雰囲気を垣間見ることが出来るのでそういった意味ではワクワクしますが。
なお、ポアロはこの事件の1週間後に『オリエント急行殺人事件』に巻き込まれます。
また、真相がわかった上でもう一度最初から読み直すと、序盤にダブルミーニングが隠されていて意味がわかった上で読むとゾっとします。
ドラマ版の感想
原作を読み終わってすぐにU-NEXTでデヴィッド・スーシェ主演のドラマ版を見ました。
結論から言うと、下手な映画よりクオリティが高くとてもオススメです!!
ドラマ版のあらすじ
バグダッドを訪れていたポワロは、偶然、甥を訪ねて近くに来ていたヘイスティングスに誘われ、遺跡調査隊の宿舎を訪れる。
ポワロが粗末な宿舎に音をあげてバグダッドに戻ると、ライドナー博士の妻ルイーズが殺害されたとの報せが入る。
ポワロはルイーズから、命を狙われていると打ち明けられていた。
捜査を進める中、さらなる殺人事件が発生する…。
<作品情報>
製作 | 2000年 |
エピソードNo. | シーズン8 第2話 |
キャスト | ライドナー博士(ロン・バーグラス) |
時間 | 99分 |
配信情報 | U-NEXT(定額見放題) メソポタミア殺人事件を見る |
原作とドラマの違い
原作では博士の妻ルイーズは『松明を持って湿地から姿を現し男を惑わせる妖精』と言われる美しい女性です。
ドラマ版ではどんな美女が登場するかと楽しみにしていたのですが、原作の設定よりもかなりお年を召した女優さんでした。
ケアリーも同様で、かなりハンサムなはずなのに出てきたのはインディジョーンズの偽物みたいな男…。
それでも、舞台となる発掘現場の雰囲気がキャスティングの不満を補って余りある魅力がありました。
また、ドラマ版では原作にない殺人事件が発生します。
書籍情報
2022年現在、「メソポタミヤの殺人」の日本語版は児童書も含めると5種類あります。
① 2020年新訳版(早川書房)
翻訳:田村義進
② 2003年版(早川書房)
翻訳:石田善彦
③ 電子書籍版(グーテンベルグ21)
翻訳:高橋豊
④ 創元社版(2000年)
本のタイトルは異なりますが「メソポタミヤの殺人」と同一の作品です。
翻訳:厚木淳
⑤ ハヤカワジュニアミステリ版(2020年)
翻訳:田中義進
原作では区別がつきにくい発掘調査団メンバーのイラスト付き(しかも原作イメージ通り)なので大人にもオススメ!!
アガサ・クリスティ(1890~1976)
作者のアガサ・クリスティは1920年に『スタイルズ荘の怪事件』で作家デビューを果たし、1926年に発表した『アクロイド殺し』の常識破りのトリックがミステリファンの間でフェアかアンフェアかの大論争を招き一躍有名になりました。
作品の多くは世界的なベストセラーとなり、ギネスブックによって"史上最高のベストセラー作家"に認定されています。
まとめ
アガサ・クリスティの『メソポタミヤの殺人』を紹介しました。
登場人物が多く、クリスティにしてはあまり上手に書き分けられていないため小説よりもデヴィッド・スーシェ主演のドラマ版を先に見ることをオススメします。
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