「エッジウェア卿の死」の原作小説を読み、ドラマ版を見ました。
それぞれの感想や原作とドラマ版の違いなどをご紹介していきます。
作品情報
名探偵ポアロシリーズ7作めにあたる「エッジウェア卿の死」は、アガサ・クリスティが1933年に発表した長編推理小説です。
シリーズの中ではマイナーな部類に入りますが、「アクロイド殺し」や「オリエント急行殺人事件」にも負けない巧みな構成の作品で、クリスティの有名作品を一通り読み終えた人にぜひ読んで欲しいオススメの1冊です。
発表 | 1933年 |
英題 | Lord Edgware Dies |
ポアロシリーズ | 第7作め |
ジャンル | フーダニット(犯人捜し) |
あらすじ
ポワロは有名女優のジェーン・ウィルキンソンから、夫のエッジウェア卿との離婚交渉に協力してほしいと依頼される。
ポアロはエッジウェア卿に会い、ジェーンとの離婚を拒む理由を訊ねる。するとエッジウェア卿は、半年以上も前に離婚承諾の手紙をジェーンに送ったという。
ジェーンは手紙など受け取っていないというが、エッジウェア卿と離婚できるとしって上機嫌。
翌日、エッジウェア卿は殺害される。使用人達によると、エッジウェア卿が殺害された夜、ジェーンがやって来たという。
警察はすぐにジェーンを逮捕しようとするが、ジェーンはその時間に晩餐会に出席していたという完璧なアリバイがあった。
登場人物
エルキュール・ポアロ | 私立探偵 |
ヘイスティングズ | ポアロの友人 物語の語り手 |
カーロッタ・アダムズ | 女優 |
ジェーン・ウィルキンスン | 女優 エッジウェア卿の妻 |
ブライアン・マーティン | 映画俳優 |
エッジウェア卿 | ジェーンの夫 |
マーシュ大尉 | エッジウェア卿の甥 |
ジェラルディン・マーシュ | エッジウェア卿と先妻との娘 |
キャロル | エッジウェア卿の秘書 |
ジェニー・ドライヴァー | カーロッタの親友 |
ドナルド・ロス | 若手の舞台俳優 |
エリス | ジェーンのメイド |
マートン侯爵 | ジェーンの新しい恋人 |
出版状況
2022年現在、「エッジウェア卿の死」は福島正実さん翻訳版(クリスティー文庫)と、松本恵子さん訳版(グーテンベルグ21)の二種類があります。
① クリスティ文庫版
翻訳は福島正実さんです。
② グーテンベルグ21版(kindle読み放題対象)
2015年にグーテンベルグ21から発売された電子書籍版の翻訳は松本恵子さんです。
KindleUnlimitedの読み放題対象作品なので、お試し期間を利用すれば無料で読むことも出来ます。
作者
アガサ・クリスティ(1890~1976)
作者のアガサ・クリスティは1920年に『スタイルズ荘の怪事件』で作家デビューを果たし、1926年に発表した『アクロイド殺し』の常識破りのトリックがミステリファンの間でフェアかアンフェアかの大論争を招き一躍有名になりました。
作品の多くは世界的なベストセラーとなり、ギネスブックによって"史上最高のベストセラー作家"に認定されています。
ココが面白い
『エッジウェア卿の死』は一言で表すと「読者の心理的盲点を利用した大胆な事件」です。
『アクロイド殺し』や『オリエント急行』を読んだ後でかなり用心深くなっていると思ったのに、すっかりとクリスティに騙されてしまいました。
ポアロシリーズはすべて読みましたが、この事件の犯人はとても印象に残っています。
ここから先はネタばれの内容を含みますので未読の方はご注意ください。
読者の心理的盲点をつくトリック
作中でポアロ自身も言っていた通り、
人物模写(モノマネ)が上手いカーロッタが、ジェーンになりすましていた、というのはすぐに思い当たるのですが、カーロッタにやらせた者の正体が謎です。読者はこの謎に飛びつき、甥のマーシュか俳優のブライアン・マーティンが怪しいと思うでしょう。
特に、ブライアンはジェーンに捨てられて恨んでいたのでジェーンに殺人犯の汚名を着せるのは動機としてありえそうなことだと思えます。
読者はポアロが最後には必ず事件の謎を明らかにすることを知っています。なので、『ポアロが間違えるはずがない』という心理が働きます。
本作以降、犯人が殺人を繰り返すようになる
また、『エッジウェア卿の死』以前のポアロシリーズでは、一度の事件で殺人は一度きりでしたが、本作以降は "殺人は癖になる" というポアロの言葉通り口封じのために被害者が増えていきます。
犯人の独白
この作品の印象がガラッと変わります。
ただの教養が無く、浅はかな考えの女性という印象から、サイコパスだったことが明らかになります。
本作のようにラストの手記で全体の印象がガラッと変わる作風が気に入った方は『春にして君を離れ』もオススメです。
おまけ
ポアロは街中で偶然聞こえてきた会話にヒントを得て事件を解決しました。
ミステリではたまにこういうシーンがある気がします。気になって調べてみたら「カクテルパーティ効果」というらしいです。
カクテルパーティ効果
音声の選択的聴取のことで、選択的注意の代表例である。
Wikipedia
カクテルパーティのように、たくさんの人々がそれぞれに雑談しているなかでも、自分が興味ある会話、自分の名前などは自然と聞き取ることが出来る。
なんとなく真相がつかめたような気がしているが、自分でもまだ上手く言葉に言い表せない時、他の人の言葉をかりるんですね。
ちなみに、「カクテルパーティ効果」が発表されたのは1953年で、「エッジウェア卿の死」の発表よりも後です。
クリスティは知らず知らずのうちにこの現象に気がついていたんですね。
まとめ
アガサ・クリスティの『エッジウェア卿の死』を紹介しました。
Amazonが提供するkindleUnlimitedの読み放題対象作品でもあるので、興味のある方はぜひ読んでみてください!
「エッジウェア卿の死」を無料で読む